深海のイルミネーション? 海の中の発光生物
「光る生き物」といえば、まさに自然のサマーイルミネーションともいえる蛍の光が有名ですが、世界中に生息する発光生物の8割が海の生き物といわれており、近年では深海の「光るサメ」が発見されたことも記憶に新しいところです。
しかし、実は海の生き物、特に深海で暮らす生物にとっては発光することは珍しいことではなく、深海魚の半数以上が発光するといわれています。
そこで今回は、海のイルミネーション・深海の発光生物が光る理由や仕組みについてご紹介します。
「発光生物」はどうやって光る? 体が発光する仕組み
まずは発光する生き物がどのような仕組みで体が光るのか、人間では考えられない驚きの機能の謎について解説していきます。
深海に住む生き物を含めた発光生物は、自分自身で発光に必要な物質を作り出す「自力発光」と、体内に住む発光バクテリアなど他の生物を利用して発光する「共生発光」の2つのタイプに分かれます。
深海生物の多くが「自力発光」タイプであり、そのほとんどが自分自身で作り出した「ルシフェリン」と呼ばれる発光基質と、「ルシフェラーゼ」という発光酵素による化学反応で光を発する仕組みであることが分かっています。
しかし、「ルシフェリン」と「ルシフェラーゼ」による発光は、あくまで発光生物が光る基本的な仕組みの総称であり、厳密には生き物によって発光に必要な基質と酵素が異なり、さらに発光の細かな仕組みも違っているため、現時点では発光の謎が明確に解明されている生物は実はほとんどいないそうです。
ちなみに「自力発光」タイプは、ハダカイワシやホウライエソなどの深海魚のほかに、蛍やサクラエビ、ウミホタルやホタルイカなどが該当し、「共生発光」タイプにはホタルジャコやヒイラギなどが該当します。
「カウンターイルミネーション」と呼ばれる習性も! 深海の生き物が発光する理由
蛍が発光する理由としては、主に求愛行動や敵への警告のためではないかといわれていますが、深海の生物はなぜ発光するのでしょうか。
敵に見つからないように身を隠す
海のなかで暮らす魚たちも太陽光に当てられていますが、自分の輪郭が影になることでさらに下の深いところを泳ぐ生き物に位置を知らせてしまい、結果として襲われる原因となってしまいます。
そこで周りの環境の明るさと同じくらいの光を発光させることで、自分の影を隠しているのです。
また、水深200~1,000メートルの中深層で暮らす深海魚のほとんどが腹部を光らせる発光器を持って自分の影を隠していますが、これを「カウンターイルミネーション」と呼ぶそうです。
獲物・捕食者の目をくらます
深海生物にとって発光は、獲物を捕食しやすくするために備わった機能でもあります。
周りを照らして獲物がいないか探したり、発光器を使って獲物をおびき出したりといった方法で捕食に利用しますが、なかには発光器で自分を小魚に見せかけて大型の魚をわざと引き寄せるものもいます。
また、逆に捕食者の目をくらまして、逃げやすくするために発光する深海生物もいます。強い光を発したり、発光液を体外へ分泌させたりとその方法は様々ですが、なかにはあまりの光の強さで捕食者が気絶してしまうこともあるのだとか。
そのほかには、発光させることで暗い深海で仲間とのコミュニケーションを図るためや、オスとメスでパートナーを見つけるために利用している可能性もあると考えられています。
海のイルミネーションを間近で楽しもう!
深海の発光生物が光る理由や仕組みについてご紹介しました。
深海魚などを展示している水族館では、発光する生き物を実際に見ることができ、なかには「深海のイルミネーション」「魚たちのイルミネーション」と題した展示を行っている施設もありますので、ぜひ一度お近くの水族館へ足を運んでみてはいかがでしょうか?
なお、クリスマスシーズンなど時期によっては、水族館がある観光スポット周辺でイルミネーションイベントが行われている場合もありますので、昼間は水族館の魚たちによるイルミネーション、夜はロマンチックなイルミネーションとあわせて鑑賞してみるのも素敵な1日となることでしょう。