menu
close
Knowledge

クリスマスソングの昔からの定番?クリスマス・キャロルって?

クリスマスの音楽と言えば「きよしこの夜」「クリスマスおめでとう」など、誰もが子供の頃から耳にしている定番のフレーズがありますよね。これらのポピュラーなメロディー、実はクリスマスソングの中でも、キリスト教的な意味合いが強い「クリスマス・キャロル」と呼ばれるのをご存じでしたか?今回はクリスマス・キャロルについて、その由来や代表曲をご紹介します。

クリスマス・キャロルの由来

「キャロル」は踊りのための民謡を指す言葉でしたが、徐々にキリスト教の文化として発展し、13世紀頃にクリスマスと関連付けられ始めたと言われています。19世紀にはクリスマスを祝う音楽として定着しますが、意外にもこの頃までキャロルは教会で演奏されることはあまり無かったようです。新しく書かれたキャロルには明るい曲調のものも多く、どちらかと言うと大衆的な文化として発展してきたようです。

今ではクリスマス・キャロルは、クリスマス時期に歌われるイエス・キリストの誕生を祝う歌を指すようになりました。クリスマスシーズンの喜びを歌う広義なものはクリスマスソングとして扱われ、クリスマス・キャロルとは別に分類されています。

慈善の精神が育んだキャロリング


クリスマス映画の中で、イルミネーションやヒイラギで飾られた玄関先で、数人のグループが譜面を手に合唱しているシーンを見たことはありませんか?これは「キャロリング」と呼ばれ、クリスマス時期に有志や子供たちが集まって近隣のコミュニティでクリスマス・キャロルを歌う昔からの風習です。

この風習は、まだ封建社会が根強い時代に、貧しい人々がクリスマスの食べ物を裕福な家庭に乞うために戸口で歌ったことが元になったという説があります。今でも多くの人々が教会やコミュニティで慈善活動を目的としたキャロリングに参加しています。

キリスト教の文化圏では、冬を迎えて暮らしがさらに困難になる貧しい人を助けようという慈善の精神とクリスマスは結びついています。特に英国では、クリスマスと慈善の精神を結びつけるきっかけとなった有名な小説があります。

温かなクリスマスを蘇らせた小説『クリスマス・キャロル』

度々映画化もされている、英国の国民的作家チャールズ・ディケンズ原作の小説『クリスマス・キャロル』。この作品が出版された当時の英国は、産業革命で急速に工業化が進んだことで社会問題が多く発生している荒んだ状態でした。家族で過ごすクリスマスの温かな風習も廃れ始めていた中に、ディケンズは問題提起の意味を込めてこの作品を発表しました。

そして瞬く間にベストセラーとなり、守銭奴の主人公スクルージの改心の物語は人々の心に慈善の精神をよみがえらせました。著名人が進んで寄付を行ったり、企業がクリスマスを祝う製品を発表したり、王室からクリスマスツリーを飾る風習が流行したりと、この小説は社会に大きな影響を与えたそうです。「クリスマスカード」もこの時初登場しました。

今日のクリスマスの慈善の精神と、プレゼントやカードを贈りあい、家族で豪華な食事を囲むクリスマスらしい風景は、この小説の流行によって培われたとも言われています。

クリスマス・キャロルの逸話

クリスマスを祝うだけでなく、人々に温かい心をもたらすクリスマス・キャロル。代表的な曲の逸話をいくつかご紹介します。

「聖しこの夜」(Stille Nacht, heilige Nacht)
実はこの曲、オルガンが壊れ讃美歌の演奏ができなくなってしまったオーストリアの司祭が、ギターで演奏できる曲をどうにかミサに間に合わせようと大急ぎで作った曲なんだそうです。そんな曲が今日まで親しまれているとは、作曲した司祭は思いもしなかったでしょうね。

「もろびとこぞりて」(Joy to the World)
「もろびとこぞりて~」の歌いだしでおなじみの曲ですが、日本の讃美歌集に掲載された当初は「たみみなよろこべ」という別の歌詞も掲載されていました。欧米では節のなかの音数が曲に合えば歌詞を変えて歌う、いわゆる替え歌が普通に行われているため、それを踏襲したようですが、日本語の特長的にはそれが難しく別の歌詞で歌うことが定着しなかったそうです。

「もみの木」(O Tannenbaum)
ドイツで誕生したキャロルと言われてますが、この曲のメロディーは米国のアイオワ州、メリーランド州、ミシガン州、ニュージャージー州の州歌にも採用されています。もろびとこぞりての別の歌詞が定着しなかった日本とは対照的なのが面白いですね。

クリスマス時期に何気なく耳にすると気分を盛り上げてくれるクリスマス・キャロルたち。今年は街中で耳にしたら、ぜひその成り立ちも思い浮かべて温かな気持ちでクリスマスを迎えてください。

Please Shareこの記事をシェアする